② 耳管開放症の病態と発症に関与する因子
耳管開放症における自声強聴、耳閉感などの耳症状は耳管狭窄症と同様ですが、呼吸音聴取は特異性が高く、また、めまい、肩こり、うつ状態など全身症状がより強いのが特徴です。
1)耳症状:耳閉感、自声強聴、呼吸音聴取、耳鳴、難聴 2)めまい 3)声の異常(開鼻声) 4)肩こり 5)頭痛、眼の違和感6)うつ、うつ状態 など
耳管開放症では、ダイエットなどによる急激な体重減少で、耳管周囲の支持組織(特に脂肪組織)の減少が誘因となり易く、食生活の欧米化や運動不足により血液粘度の増加や血管壁硬化などにより耳管周囲の血液循環障害も一因になりえると考えられます。その結果、通常安静時には耳管周囲の脂肪組織や血液のうっ血などによる圧迫にて閉じている耳管内腔が、常に開放あるいはそれに近い状態になるため自分の声が響いたり耳閉感を生じるようになりますし、症状がひどい時は、呼吸音がザーザーと聞こえたり、めまい症状や肩こりが強くなったりします。
本症は、30歳代からの40歳代と60歳以上の女性に特に多く、男性では60歳以上の比較的高齢者に多いのが特徴です。女性においては、妊娠、経口ピルが影響し、低血圧や自律神経失調症を伴うことが多いのも特徴です。男性では肝硬変、心臓疾患、腎臓疾患などの慢性消耗性疾患の合併や胃・大腸など消化管や心臓手術後体重減少の合併を高年発症の半数以上に認めます。いずれの場合でも、症状発現の数年前から発現時までに短期間の急激な体重減少を経験していることが多く、体重が減少後増加し元に戻っても、主に腹部に脂肪が着くだけで耳管周囲の脂肪組織はそれほど増えないため、耳管開放症の発症は、BMIが正常でも体重減少既往がある方で明らかに多くみられます。