① アレルギー性鼻炎
1)アレルギー性鼻炎とは
アレルギー性鼻炎では、風邪とは違ってのどの痛みや咳、黄色い鼻水は通常なく、透明な鼻水、発作的で連発するくしゃみ、鼻づまりの3つの症状を生じ、いわゆる花粉症では、目のかゆみが特徴的です。
花粉症では、スギ花粉が2月中旬から3月下旬、ヒノキ花粉が3月下旬から5月初めにかけて飛散しアレルギー性鼻炎の原因となりますが、それ以外にも、他の樹木(シラカンバやハンノキなど)や、草(イネ・キク科など)の花粉によっても症状が起こります。また、年中鼻症状があって苦しんでいる方は、ハウスダストやダニ、イヌやネコのアレルギー性鼻炎を発症している可能性があります。
最近、舌下免疫療法が注目されていますが、アレルギーを根本的に改善する方法は現状ではないため、治療により症状を軽減させることが重要です。
2)原因・症状
まず花粉症の場合ですが、原因としては以下になります。生息地域や気候などによって異なる点がありますが、下の図のようにスギ(飛散時期は2~4月)、ヒノキ(飛散時期は3~5月)、ブタクサ(飛散時期は8~10月)以外にも、シラカンバ(4~6月)、イネ科(4~11月)、ヨモギ(8~10月)などがあります。
鼻炎症状を引き起こす植物
花粉症を引き起こす植物と飛散時期(カッコ内)
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ハンノキ属(カバノキ科)
(1月~4月)
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スギ
(2月~4月)
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ヒノキ
(3月~5月)
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シラカンバ(カバノキ科)
(4月~6月)
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イネ
(4月~11月)
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ブタクサ(キク科)
(8月~10月)
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ヨモギ属(キク科)
(8月~10月)
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カナムグラ(アサ科)
(8月~10月)
近畿(関西)エリア
関西でも2月から3月にかけてピークがくるスギや、3月に多く飛散するハンノキ属(主にオオバヤシャブシ)、そしてヒノキ科の花粉量が多い4月など春先は花粉の飛散が増えますが、秋のヨモギ属やブタクサ属にも注意が必要です。
草や木などの花粉、ダニ、ハウスダスト、カビ、動物の上皮などのアレルゲン(抗原)が鼻の中の粘膜に付着すると、体内にアレルギー反応を引き起こす抗体(IgE)ができることが主な原因です。その抗体が鼻などに存在する細胞(好塩基細胞:マスト細胞と好塩基球)に固着し、アレルギー物質が再度侵入するとその細胞が反応しヒスタミンなどのアレルギー誘発物質が放出されて受容体と結合することで鼻に炎症が起こり、鼻水などの鼻症状を生じます。炎症が強かったり繰り返されることで、より頻回にくしゃみが起こり、鼻水がたくさん生成されて鼻が腫れるため、鼻づまりなどのつらい症状が引き起こされます。
3)診断
受診されたときに簡単な問診をし、診察では鼻内を観察し、当院では血液検査による血清特異的IgE検査を行っています。血液の検査によって、抗体(IgE)を調べ、アレルギーの原因物質を特定することができます。
4)治療
以前は飲み薬は眠気があったことから、軽症例では外用薬のみ出されることもありましたが、最近の抗アレルギー剤は、眠気が少なくなったこともあって軽症例では飲み薬のみが多くなり、中等症かそれ以上では飲み薬と点鼻薬の併用、重症例では、飲み薬にステロイド点鼻薬を併せた治療が一般的です。
通常処方される飲み薬は、ヒスタミン受容体拮抗薬です。アレルギー症状を全般的に改善することができます。他にも、炎症を抑える薬が開発されており、さまざまな薬を組み合わせながら症状の改善をめざします。
また、点鼻薬も重要な治療の一つで、鼻の噴霧ステロイド剤は症状改善効果の高い治療です。ステロイドは外用ですし内服と違って微量にて、局所での効果のみなので、1年以上使用しても全身的な副作用はないと考えられています。市販で販売されている点鼻薬には血管収縮薬が含まれているものが多く、即効性があるため一時的に劇的に症状は改善しますが、リバウンドでその後に逆に鼻閉を生じやすく、さらに慢性使用で鼻粘膜の状態を悪化させるため、短期間のみの使用としてください。
漢方薬は西洋医学の薬との相性も良く小青竜湯が頻用されています。
手術治療には、鼻粘膜変性手術(下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術、下鼻甲介粘膜焼灼術)、鼻腔形態改善手術(下鼻甲介粘膜下切除術、鼻中隔矯正術など)、鼻漏改善手術(後鼻神経切断術など)があります。いずれの手術も当院から専門病院の専門ドクターへのご紹介も可能ですのでご相談ください。
5)生活上の注意
アレルギー性鼻炎はアレルギー物質に反応する病気であるため、原因の除去と回避が重要です。スギ花粉症の方は、花粉飛散時期にマスクや花粉用メガネを着けたり、家に持ち込まないように毛織物などのコートは控えたり、帰宅時に衣服や髪を良く払ってから入室したりすることが大事です。
また、ダニアレルギーの方は、布張りのソファーやカーペットの掃除をしたり、布団や枕のカバーを防ダニに取り換えたり、布団を干したり(布団乾燥機の使用でも可)、部屋の温度・湿度を下げたりするように注意しましょう。