② 慢性副鼻腔炎
副鼻腔炎は一般的には蓄膿(ちくのう)症とも呼ばれていますが、風邪などのウイルスや細菌感染、あるいはアレルギーなどにより、副鼻腔の粘膜に炎症が起こることで発症します。これらがきっかけで鼻の中でいったん炎症が起きると、鼻の粘膜が腫れたり、最初はさらさらしていても数週間後には次第に粘りがあって黄色い鼻水が出てきたりします。この腫れや鼻水によって、副鼻腔と鼻の間にある自然口がふさがると、副鼻腔から分泌物や異物を排泄できなくなり、鼻水や膿がたまってしまいます。こうして起こるのが副鼻腔炎です。
副鼻腔炎は、発症から4週間以内の場合は急性副鼻腔炎、症状が2,3ヵ月以上続く場合は慢性副鼻腔炎と定義しています。
診察では、どんな症状にいつ頃から困っているのか、といったことを確認(問診)した後、鼻の中やのどを検査します。血液検査、内視鏡検査、画像検査(CT検査)などで調べて副鼻腔炎の程度や広がり具合により診断を下し治療薬を選択します。
治りにくい慢性副鼻腔炎には、好酸球性副鼻腔炎(後述)がありますが、この病気は治療にかかった医療費について助成を受けられます。
診断を行う手順は、まず診察後に必要があれば内視鏡を使って、鼻の中を観察します。鼻内の粘膜の発赤や腫脹(はれ)、鼻水の性状(粘っこくないかどうかなど)、鼻茸と呼ばれるポリープ状のできものがあるか等を調べます。内視鏡を使って調べた上で、必要であればCT検査をします。当院のCT装置は耳鼻咽喉科専用のコンビームCT装置ですので、より精密な病変が判読可能です。CT検査では、鼻の中の副鼻腔と言われる空洞(上顎洞、篩骨蜂巣、前頭洞、蝶形骨洞の4つ)に膿がたまっているかどうかを確認します。
鼻副鼻腔の内視鏡検査とCT検査の結果で、副鼻腔炎の重症度を判定して、治療方針を決定します。特に急性副鼻腔炎では、抗生物質による治療は必須で、これにより炎症の原因となる細菌を殺したり、細菌の増殖を抑えたりすることで、副鼻腔炎の症状を改善します。慢性副鼻腔炎でも抗生物質はマクロライド系のものを少量長期(3カ月から6カ月)投与することで効果が出来ることが知られています。さらにアレルギー性鼻炎を随伴しているときは、ロイコトリエン受容体拮抗薬と抗ヒスタミン薬の両方またはどちらかを併用することもあります。いずれもアレルギー反応にかかわる物質(ロイコトリエン、ヒスタミン)の働きを抑える飲み薬です。鼻づまりや鼻水などの症状を軽くするために使用されることがあります。これ以外には、病的な副鼻腔分泌液の正常化を図るために表面活性剤のカルボシステインも併用されることがあります。
ステロイド系の点鼻薬の使用は、上記にプラスして炎症を抑える効果があり、鼻症状の改善を目的として使用します。お薬での治療を半年間続けても効果がもう一つの時は、手術治療を行う方もおられます。内視鏡を使った手術が一般的でして炎症を起こしている鼻内や副鼻腔の粘膜や鼻茸(鼻ポリープ)を取り除くとともに、鼻と副鼻腔をつなぐ穴を広げて、炎症が起こりにくい状態にすることが可能です。手術は、より専門で鼻副鼻腔内視鏡手術の専門医師がいる施設をご紹介させていただくことが可能です。