2)滲出性中耳炎
痛みがないか、かなり痛みが少ない中耳炎もあります。急性中耳炎の後などにゆっくりと生じる病態で、下水道の役悪を果たす耳管に慢性的な詰まりがあるときに生じやすく、鼓膜の奥(鼓室内)に液がゆっくりと数週間かけて溜まって生じるこのような中耳炎を滲出性中耳炎と言います。
飛行機や高層エレベーター等で下降するときや電車がトンネルに入って出たとき等に、急激な外圧負荷が耳(中耳)にかかります。このときに鼓膜の内側に陰圧が強くなって炎症性の貯留液を急激に生じる航空性中耳炎(後述:中耳炎の3)で)のような急性の病態も広い意味で滲出性中耳炎に含まれます。
滲出性中耳炎を生じると鼓膜の動きが悪くなり聞こえが悪くなります。お子さんの場合は順応性が高いため聞こえの悪さに気づかないことがありますし、逆にご高齢の方の中には、お年のせいと思ってあきらめている方がおられますので、周囲のご家族の方は特に注意が必要です。当院では、顕微鏡や内視鏡による診察、それに聴力や耳管機能のチェックおよび鼓膜の動きを調べることで容易に確認できます。
治療は、病状が軽症ではないときはレントゲン検査などで鼻副鼻腔病変や中耳病変の程度を確認することもありますし、これにより投薬内容をより作用の強い薬剤への変更や追加も行います。耳管狭窄が検査で中等症以上の時は、鼻から耳に空気を送る耳管通気(じかんつうき)という処置をしたり、当院での独自の高性能レーザー装置にて鼓膜切開を行い、中の滲出液を出したりしますが、1回あるいは2回の鼓膜切開を繰り返しても治りが悪いときは鼓膜チューブを挿入するか、鼓膜切開だけでは耳症状が改善しにくく耳管の詰まりがかなり強いときに耳管鼓膜チューブ挿入術を行うこともあります(どちらもトップページ右側にある『耳の病気の手術治療』から手術の詳細がご覧いただけます)。
滲出性中耳炎は、1回か2回の鼓膜チューブ挿入術で改善していく方も半分程度おられますが、3回以上繰り返すと治療には年単位の時間を要することが多くなりますし、特に当院への受診患者様は他の施設で治りにくい方がご紹介等で沢山来られています。なお、鼓膜チューブは挿入後半年から1年後に自然に抜去する方が多いのですが、早い方は1,2カ月以内に鼓膜からすり抜けて外耳道に出てしまうこともあります。その場合でもまた入れ直すと、半年以上の長期に装着できることがありますので、ほとんどの場合はご心配入りません。